現在、国内のオーディオアナログマニアの間でのアイドラードライブタイプのレコードプレイヤーの人気は根づよく、
SN比などが優秀なスペックを持つ新発売のDDモーターやベルトドライブ式が市場に出まわれっているのに、わざわざ
アイドラータイプを求める方がおられるのは,音にたいするこだわりの表れだと感じます。
しかし現状は、どうにもこうにもこんな事があってもいいのかと思うことが多いのです。
限りなくあやしい情報や品物が見受けられます。 ヴィンテージオーディオはあやしげな伝説で組み上げられた砂上の
楼閣の如きであります。 ユーザーの方々もうすうす気付かれている事でしょう。 それに気付かないのは、それを行っている人たちだけかも知れません。 嘘がばれないためには嘘をつき続けるしか無いのです。
アイドラー型は発売からかなりの年月を経過しているため交換パーツのデッドストックをみつけるがむつかしく、かわりに
代替品を使用しなければなりません。 しかしこの場合あくまでオリジナルに準じたものでなければ意味がないのです。 
改造型等と称して自社開発している部品を自画自賛して、オリジナルより数段良いとか、オリジナルのものはこれにくらべたらお話しにならない等々、あまり感心しない広告が多く、オリジナルの欠点をひきあいに出すのが常套手段なのです。 
いわくリムドライブなのでゴロがでる、モーターの振動が大きい、SN比がわるい等、リムドライブメカニズムから推し量ると、すぐにわかるおかしな理屈です。 一番に理屈の合わない事は、リムドライブのゴロがでるという現象です。
はたして使用しているアイドラーは正常なオリジナル品であるか、きちんと調整クリーニングをなされているのか、
又、リムドライブだからゴロは仕方ないなどです。
現在、マニア一番の人気と思われるEMT927(あくまで良品)などは、モーターゴロが出るでしょうか? 私のレストアした
ダブルアイドラー型レコカットは、EMTよりもっと前のSP時代のきわめて原始的な機構をもったものですが、ゴロなどは
聴覚上感知する事はできません。 自社開発した製品を売るためにオリジナルをけなす事は好ましくありません。 
まずゴロが出ることなどは、当時の高級プレイヤーでは考えられず、アイドラーの不調以外の原因があるとしたら、
ただきちんとした調整修理をしていないだけでしょう。 次にモーターの振動の大きさの問題ですが、モーターのレストア、
特にスピンドルシャフトの研磨と調整、エージング等には根気と技術が必要です。 それぞれのモーターの性格をよく見極め、最良の状態までトライを繰り返す良心です。 いいかげんに組みあげられたものには、いいかげんな音しか出てきません。 そしてSN比、よくアイドラードライブ型はノイズ成分がハーモニクスと関係しており、音楽性をゆたかに再現すると言われています。 これはある意味では正しく、ある意味では間違っています。 SN比の面からみればノイズは無い方がいいですが、問題はそのノイズの性質なのです。 実にSN比の問題はプレイヤー本体だけでなくシャシー、キャビネットからの外乱ノイズとのかね合いがあり単純に表現出来ません。 SN比だけでは新発売される現行機のほうが断然優れているのは明らかです。小型のモーターで重いプラッターを回し大質量、かぎりなく振動しないキャビネットに据えられた新型プレーヤーです。 しかしこのように作られたプレイヤーがあまりにも静かで不自然なほどの静寂間を感じる事が多々あります。 
リムドライブ型を使用される方々はこの部分でリムドライブ型に人間的なあたたかさを求められるのだと思います。

センタースピンドルノイズについて
センタースピンドルノイズの大半はその底部から発生するのがほとんどだと思われますが、この部分はその機種に応じた修理調整を行えば問題は解決します。 しかし案外気付かないのは、センタースピンドルシャフト自体とスピンドル軸受け部内壁の研磨です。 回転時のオイル下がり現象で、センタースピンドルの安定性に問題が起こる場合があります。 
ここに支障があるとアイドラーはトルク・ムラが発生し、ゴロが出やすくなります。 これは気温等により出たり出なかったりする事があります。 この時の音はコロコロとアイドラーがあそんでいる様な感じで出る事が多いです。 

余談ですが
リムドライブ型プレイヤーのレストアについては私の友人からおもしろい話を聞きました。 彼もまたビンテージオーディオに関わっている人間なのですが彼の言う所によると、アメリカではこのような修理にたずさわる人間を社会的失格者とみなすそうです。 お金を儲け、お金をもつ事が社会的成功の証しである国で、お金にならない儲けにならない事にせっせと励む人間はその時点で社会から相手にされないそうです。 これにならえば国内の技術にたずさわる人間のほとんどは、社会的失格者という事になります。 しかし国内のビンテージオーディオにたずさわる人間は、アナログ機器を文化財として保持する気構えがなければアナログの未来は無いと思えます。 これからのアナログは正しい情報の開示と人と人とのつながりにより行われる事を望みます。
ガレージメーカーがオリジナルにまさる物を作るのは並大抵の事ではありません。彼らが試みた事をオリジナル開発者が試みなかったはずはありません。 プロフェッショナルの彼らが日夜、研究を行い長期の使用にも耐えている製品となっているわけで、ですからユーザーは正しい情報の認識を求められています。




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アイドラードライブの現状について