センタースピンドル部はスピンドルシャフトとスピンドルボックス部の二つのパーツから成り、スピンドルシャフトは脱着可能となっています。 このシャフト部の上部は円柱形の本体の上部に皿形のプラッター受け部が取り付けられ3ヶ所のネジ穴があけられプラッターをのせたのち、3本の専用ネジで固定されます。 Mk.2の場合、アルミ合金プラッターを使用しているため、専用スペーサーを取り付けてMk.1との交換性を可能にしています。
その上はレコード用のスピンドルとなっています。 この部分の研磨も大切な部分でトーレンスTD124はアウタープラッターをのせていますのでオートストップ使用時にはプラッターが回転し、アウタープラッターは停止している状態になります。 
この時、回転体と静止体の唯一の接点がここの部分に不具合があると異音が発生しTD124のメカニズムの品位を損ねます。 円柱スピンドルの下部(底部)にはボールベアリングがうめこまれており合金製のリングにより固定されています。 
このシャフト部本体、大変良く作られたものでよほどの悪条件におかれなければほとんど錆を生じることはありません。
スピンドルボックスには二種類あります。 初期型はその内部にプラスチックを使用したもの、それ以外のメタルを使用したもので、これらの交代時期は製造番号16000番台前後だと思われます。 したがってMk.2はすべてメタルを使用したものとなっています。 このスピンドルボックスはその内部の素材以外その構造は同じものになっています。 まず上部には
シャシーに取り付けるための円形部分があり、3ヶ所のネジ穴が切ってあり、シャシーの下部より3本の小ネジで組み立てられ、長期使用による変形を起こした場合交換可能となっています。
現在、このスピンドル部には正しい情報がユーザーに与えられておらずTD124の評価を下げる原因のひとつにもなっています。 レストアの結果ですが、まずこのスピンドル部はこわれるという事はありません。 通常の使用という事ですが、
唯一修理不能と思えるのは取り扱いの不備によりスピンドルシャフトを変形させてしまった場合です。 しかしこの場合も、
ユルク・ショッパー製のスピンドルが入手できますので問題はありません。 不調の原因の多くはむしろスピンドルボックスのほうにあり、メタルスピンドルの場合は内部合金の経年変化、すなわち酸化現象にあります。 この酸化はオイルが入っていない場合は空気にふれる事で、オイルが入っている場合は錆と反応して起こります。 特に状態を悪化させるひとつにオイル注入の際にクリーニングを行わないで粗悪なオイルを注入された場合で、レストア依頼でたびたび見うけられる
モーターオイルを注入されたものは錆とオイルが混合されグリース状になって回転を不良にしてしまう場合があります。 
プラスチックタイプのものは経年変化による変形が主であり、メタルのような錆は発生しませんがこれは又、別の修理方法になります。
このメタルタイプスピンドルボックスはクリーニングと研磨によりレストアしますが、この際スピンドル内部の中ほどにある
オイルだめ部も入念にクリーニングを行わなければなりません。 ここの錆をきちんと取らなければ、また錆の発生を招きます。又、底部(下部)のプラスチックスタイラス・オイルシールドメタルカバーも新品に交換しますがトーレンスTD124においてはこの部分はプラッターの重量により自然沈下する様になっています。 スタイラスチップのベアリングの当る部分がゆるやかに沈む事により、オイルが中央に集まりベアリングにオイルがからみスピンドルの回転を円滑に行います。 
これらにおいてプラスチックスタイラスに当りがでるわけです。 このスタイラスに当りができるとその下のメタルカバーが
沈下をはじめますがやがて一定の状態で停止します。 この状態が一番安定した回転が得られます。 
この状態になるまでMk.1では20日〜50日ほどMk.2では60日ほどかかります。 したがって、この自然沈下が安定したものになるまではクイックスタートの調整はひかえた方が良いと思います。 一回目のスピンドルボックス部のレストアが終わりましたらオイルを注入しますが、TD124のこのメタルスピンドルボックスは最小のオイルで使用すべきものなのですが、
グレイの場合、通常のモータートルクよりそのトルクが増しているので、回転が早くなってしまう場合もあります。 
通常、オイルは回転部の円滑のために使用されるものなのですが、ここではオイルの粘性による抵抗により回転力の制動にも利用しています。 したがって、注入されるオイルの量はスピンドルとスピンドルボックス内のギャップの量により抵抗値を計算しながら調整します。 そののちのヒアリングにより再度の調整を行うのです。それ故に、ただ良く廻れば良いという事ではなく良質なオイルに制動された回転の質感が求められます。 きちんと調整されたスピンドルボックス部は組み込む際にスピンドルをさしこみそのままにしておくと少しずつ自重によりゆっくり沈み込んでゆきます。沈み込むにしたがって内部よりオイルが小さなあわと共にしみだしてきます。 ボトムエンドまで沈みこむと吸着状態となり再度ひきぬくには内部の空気バネが解除される部分まで力を入れて引き上げないと簡単にはぬく事はできません。
この現象はどういう事かというとスピンドルボックス内のへき面はスピンドルに接触していないという事です。 オイルによりシールドされ真空状態になっていると考えられます。接点はベアリングがスタイラスに当っているだけであり、空気圧によりダンプされて中空に保持されている形になっています。 このような動作をするものがどうしてこわれるのでしょうか。 
諸説には修理不能等と言われていますがそんな事はありません。 回転不能となるのは別の原因です、すなわち整備不良です。 まれにレストア依頼品にオイルのまったく入っていないものもありますが、そのような場合スピンドル部に多少の
キズが見受けられるものもあり又、錆びているものもありますが調整にて問題はありませんでした。 仮にもし修理不能なものでもユルク・ショッパー製の超精密センタースピンドルがありますので問題はありません このユルク・ショッパー製のスピンドルはオリジナルのもつ特長をさらにおしすすめたもので吸着力の増大がいちじるしく内部のギャップは最小にとられきわめて高精度に仕上がっています。Mk.1・2共にグレードアップには最適なもです。 このスピンドルボックス部は意図的に重力を利用した自然沈下という形式をとっています。これはプラッターの重量の軽減と安定性、メンテナンスのしやすさを考慮に入れ採用したものであると思われます。 もしこの底部をなんらかの改造をくわえる事は決して望ましい事ではなく仮に別の方法があったならトーレンス社はこの方法はとらなかったはずで、この方式がベストであったと考えたのでしょう。 彼らはプロフェッショナルなのですから。



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センタースピンドルについて その2