Mk.1の場合(212アームについて)
TD124は木製のアームプレート板を交換する事により、アーム本体をはずす事無く異なるアームを装着することができるのですが、使用者が頻繁に行うことはあまりないと思います。 したがって、アームプレート板ごと交換できるからといえ、
やはり自分の好みのアームとカートリッジが定位置をしめる事になるはずです。 レギュラーサイズ、ロングサイズの
アーム等、いろいろな仕様のアームを取り付けられますが、デザイン的にはレギュラーサイズのアームがやはりおさまりが良く使い勝手も良いといえます。
日本のBTS規格の有効長282〜285mmタイプは、例外的に外側シャシーフレームいっぱいとなり取り付けは困難をきわめます。 国内のオーディオファンの間ではオルトフォン社のカートリッジの人気は根強く、特にSPU系のカートリッジはきわめて評価が高いものです。 このSPUを使用するにあたり、専用アームに212・309系がありますが、前途の通りデザイン的な優美さという点において212アームがTD124Mk.1にはベストではないかと思われます。 
しかしこの212アームはかなりの年月が発売時より経ているため、経年変化、取り扱い上の不備等により少なく、特に後ろのバランスウェイトとセンター部を連結した個所が下がっている物も見うけられます。 この個所は修理可能ですが212の古いタイプのものはゴムで新しいものはプラスチックを使用しており、信頼のおける方からの購入が望ましいです。 SPUというカートリッジは大きくわけてGタイプとAタイプがありますが、スタジオ仕様のAタイプにはアームコネクションのポジションが異なっており、購入の際の注意が必要です。 
また、このSPUというカートリッジはご存知の通り、大変個体差が大きいのが特徴でコンディションのみならず、完調のものでもその音質にはバラツキが生じるのは通説となっています。 この様に問題のある212とSPUの組み合わせですが、
良品を得た場合TD124Mk.1と非磁性体プラッターの使用したものは大変すばらしいもので、真にSPUというカードリッジの良さをあらためて認識することができます。 全帯域にわたって、音色の濃い深みのある音が得られ、低・高音の両端は自然にロールオフしていき、場合によってはややきつめの音の出るSPUを実にうまくコントロールしてくれます。 
まさにレコード音楽を楽しむのには、必要なものを実に過不足なく再現してくれます。 
しかし212のもうひとつはアームケーブルで、オリジナルなら良いのですが、もし代替品のものを使用していた場合には
要注意。 これらの中にはSPUと212の最良の部分をすべてスポイルしてしまうものもあるので、特に注意が必要です。

グラド・ラボラトリー木製トーンアーム、シュアー・スタジオダイナティックアーム、レコカット等
TD124Mk.1には発売時にアームを選択する事ができたのですから、当然いろいろなタイプのアームが付いています。 
上記のアーム達もそのひとつです。 これらのアームについては、いまひとつ国内のオーディオファンには人気のないようですが、なかなかの実力を秘めています。 
まずグラド社の木製アームは大変よく出来たもので、軸受け部等はシンプルでありながら精度には見るべきものがあります。 この部分をクリーニング注油することで、ダンピングの向上をはかる事ができ、実に音の形の整ったソリッドな音を出すことができます。 しかしそのソリッド感は金属製のアームとはやや異なったもので、その動作と音質は大変すばらしくTD124Mk.1との組み合わせは絶妙であります。 しかしこのアームは取り扱いにやや難があり、レコードプレイ終了時のリターンにあたってはアーム本体上部にあるプラスチック円形スイッチを押さないとアームを戻す事ができません。 
このスイッチによりカートリッジが盤面から浮き上がる構造となっており、慣れないとレコード面をこすってします事になります。 
レコカットのアームはアルミ製のきわめて頑丈なものであり、シンプルそのものです。 
クラシック等のプログラムソースではやや粗さが発生する感があり、ジャズ等の方が向いているようです。 
モノーラルではバリレラカートリッジを使用してヒアリングした事がありましたが、わりあいレコードプレイヤーを選ぶ傾向がある音であり、一度ツボにはまればすごい音の出るアームなのかもしれません。 レコカット、グラド共、やや高出力
カートリッジで力を発揮します。 このタイプのカートリッジには針圧もやや重めであり、腰のすわった音という点では両者共通です。 シュアーダイナテックのみはカートリッジ一体型のため、アーム本体の性能、音質等はうかがい知れませんが、このアームに組み込まれたカートリッジとの音質的なマッチングをはかられたため、大変みずみずしく、アメリカ製とは信じられないほど纏まりのあるシックな音で、クラシック、ジャズ共、必要にして十分な音色と音場をリスナーに提供してくれます。

SMEについて
TD124にSMEアームを取り付けた場合、TD124の製造年代と同年のものを搭載したほうが良い結果を得られます。
SMEアームはその誕生から現在に到るまで軽針圧化への道をたどり続けました。 TD124Mk.1に関しては、初期型から
中期型が適していると思われ、Mk.1に軽針圧タイプのSMEを使用した場合、ややTD124に押されてしまうのではと思うのです。 Mk.2の場合は、SMEに対して適応力がかなりあり、SME全シリーズタイプにも何ら問題はなく、アームの特質を十分演じ分ける能力を有します。 Mk.1とSME・オルトフォンSPU系という組み合わせはそれなりの効果は上がりますが、特にSPUG等の場合SPU本体の音にやや異種の響きが入り込んだ様な感があり、SPU独特の輝かしい音に華やかさが加わり、SPUカートリッジのもつある種の素材さという一面が後退する感があります。 それにより、やや音のコントラストのバランスが崩れ気味と思われるふしが多々あります。 SMEはユニバーサルアームとして特筆されるべき機構をもつものであり、特にアーム取付部を可変とした事により、アームによるオーバーハングのわずらわしさを解決したことはユーザーにとって何より便利な事なのですが、逆に言えばいったいどのカートリッジがマッチングするのかわからない様になり、それがためにマッチングするカートリッジを探し求め、多大な労力とお金をつぎ込む事になります。 これは功罪相半ばという所でベストマッチングするカートリッジを見出せれば、すばらしい能力を発揮する力を秘めたアームであるといえるでしょう。

イケダアームについて
イケダアームは現在、オーディオ市場においてはその数は少なく、見つけるのに苦労するアームのひとつでしょう。 
スイスのユルク・ショッパー氏は彼の地においては、このイケダアームとSPUG系との組み合わせを推奨しております。 
この場合SPUは古いタイプのものではなく、現行品のものを使用するようにしていました。 当社でもお客様の注文により
イケダとSPUの組み合わせたものをテストヒアリングいたしましたが、212、309よりダイナミックレンジが広がり、音場の広さは相当のものでした。 しかしオルトフォンオリジナルアームのもつ自然さとまとまりの良さはやや減少ぎみであり、いわゆるハイファイ的な音に対しては無類の強さを発揮するものでした。
オーディオにおいては万人向き等という製品は存在しませんが、イケダアームはこの点においてまさにマニア向きのアームと言えます。



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トーレンスTD124におけるアーム・カートリッジの選択について