トーレンスTD124は発売当時の評価はレコード・プレイヤーのロールス・ロイスと呼ばれ、かつては王侯・貴族のみに所有のゆるされた車であり、お金ではなく身分で乗る車でした。 TD124の主な輸入先であった米国では今も昔も貧富の差が当り前、持てるものはすべてもつ事のできる国であります。 なぜTD124のみがロールスロイに比せられたかを考えると
ロイヤリティという言葉が浮かんできます。 TD124を所有するという事はオーディオという趣味の分野において最上の
クラスに達したと言う証明であったのではないかと推測させられます。
そうだとしたらTD124の再生する音はそれらにふさわしい品位が求められるはずです。 しかしTD124は純然たる機械であり、その様なものに品位をもたせるというものはなかなかむずかしく、品位は出すぎるとスノップになります。
品位は控えめに表面上は素朴さをよそおいながら、全体に総合的な気品をもたせるというのがTD124には最もふさわしいのではないかと考えます。 EMPORIUMシリーズの目標とするものは、レコード再生でレコード・プレイヤーの重要性をさらにユーザーの皆様に知っていただく事から始まりました。 しかしレストアを続けるうちに当初の目的を超えて、さらに
一歩進んでTD124はオーディオコンポーネントライン上にすべてを統括しコントロールしてしまおうという方向に必然的になって行きました。 それらを可能にするためには通常のレストアとは少々異なった技術が要求され、再生音はその表現力、世界の一流品といわれるものがもつ共通なもの、すなわち、一元的なものと多様性が重要となります。 一元的とはどの様な機材と組み合わされてもトーレンスらしさを失わないという事であり、多様性とは多種多様なプログラムソースに応じて柔軟に反応し、音楽的に十分なものを有するという事です。 したがって本シリーズの音、プログラムソースの信号に対する姿勢は原則的には受けであり、最高指揮官はむやみに動いたりはしないものです。 又、すぐれた指揮官は動くべき時は機敏に動くように本シリーズは入力信号にはすばやく反応します。 それがなくては一元的なものと多様性を合わせ持つという特製を得る事は不可能です。 TD124はその発売からすでに50年の年月が経過しております。
レストア前のものはほとんどがやっと動いている状態のものです。 そのような状態のTD124を完全に動作させるのは
大変な事です。そのように仕上げられたEMPORIUMシリーズですが、現行レコードプレイヤーの特長のひとつでもある高次元でのSN比の良さでは劣る所もありますが、あくまで自然を感じさせる静けさと気品を充分互してゆけると思っています。特に気品という点においては現代プレイヤーを凌駕すると考えますし、今回のオーディオにおいては重要なファクターだと思います。 これらによりEMPORIUMシリーズはカタログ・データー的なものはありません。
しかし、その性能の一例としてモーター単体でのレストア時の特性はプーリーを取り付け、無負荷時で再生10Vにて始動する事ができます。 これはEMPORIUMシリーズにおいて私が私に設定した基準値であります。
本シリーズはTD124になんら付加物を取りつけてはおらず、むしろそぎおとしています。 それによりおのずとオリジナルの良さが発揮されるのです。 又、本シリーズはきわめて台数がかぎられておりプラスチックスピンドルボックスを使用したものは入手困難で、本シリーズも少しずつ集めたものを今回発売するに至りました。
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EMPORIUM・シリーズへの御招待