初期型エンポリウムモデル（プラスティック軸受け）の良い状態をフルレストアして販売したのは10か月前でした。 初期型の良い状態を入手するのも大変ですが、それだけのことはあります。 初期型でないと出ないレコードの音、ことにモノーラル・ステレオ初期盤などは他では得難い音楽の愉しみを味わうことができます。
以下はレストア担当竹内のコメントです。
本機が再生する音を聴いての印象は『公平さ』 です。
レコードの素性がどういうものか、一切手加減せず正直に出す。
その語り口は辛辣さに帰せず、実をもって楽観とともに聞き手に伝えてくれる。
こういうと馬鹿正直なだけかと思われるかもしれません。
そうではないところに本機のすごいものがあります。
例えばオーケストラの弦楽合奏では練り絹のような音だけでなく、絹が縒り合された糸でもあることを音の肌触りとして示してくれる。 管楽器の色彩、音色にある艶っぽさなども正々堂々、らくらくと表現してくれる。 高域は素直に伸びて音の先の消え方が綺麗、たいして低域の下のほうがややダンプされて締まりが良い、低域の上のほう（ヴィオラ・チェロ）の領域は活発に動くから、音楽のリズムに躍動感が加わり、初めに述べたように本機の公平で正直な音の響きが心地よい。
ヴォーカルでは歌い手の伝えたい気持ちがそのまま音になってくれるから、聞き手にストレスがたまらない。 深みがあるのに、後味すっきり。
ジャズでは音の密度が高いのに息苦しくならない。 聴いているうちに音が小鬼となって跳ね回っている。 スウィングするだけでなく音楽として聴かせてくれるのを実感。
組み合わせているキャビネットについて。 これは私が製作したキャビネットであり、60年代初めに製作されたトーレンス社製ST104キャビネットより音場の澄みが勝っています。 しかし、低音域の押しはオリジナルのほうが勝っています。 もちろん十分すぎるほどの低音域は出ています。 このあたりは好みの分かれるところで、オリジナルの低音はしばしば音の濁りとして音楽に貢献するくらいの味があります。 この濁りを好まない人には受け入れられないようです。 本機の場合、音の伸びが格段に良くリズムの切れも素直なため、それを音楽に生かそうとすればグレイ製キャビネットで効果が上がり共感していただけると思い、組み込んでみた次第です。
塗装後一年ほど経過しているため、きれいに乾いて塗装面も落ち着いており、音への貢献度も高いものです。
ご購入後、欠品部品を手配したり、修理を依頼する必要のない、極上品です。
このセットに相応しい、SME3009S2初期型の保存状態の良いもの（すべてオリジナル部品で改造や後発部品に取り換えられていないもの、ナイフエッヂの刃がかけていないもの、オリジナルアームケーブル等）、そして竹内が合板から音響用に制作したアームボードも在庫していますので、ご希望の方はお知らせください。
